食事量が低下したら(1)

食事量が低下したら(1

~気をつけたい高齢者の少食と低栄養~

監修:管理栄養士 髙﨑 美幸 先生
制作・編集:メディバンクス株式会社

高齢になるとさまざまな理由で少食になり、やせる人が増えてきます。
「年をとったら当たり前」と思ってそのままにしていると、健康な生活を維持できなくなるほどの「低栄養」を招くおそれがあります。
また、暑さ・寒さがきっかけで体調をくずし、食欲が落ちることで低栄養に陥ることも少なくありません。
高齢になっても、エネルギーとたんぱく質をしっかり摂り、まんべんなくいろいろな種類の食材を食べることを心がけましょう。

1.食事量が低下する原因と低栄養の関係


低栄養とは

低栄養とは、「体を動かすために必要な“エネルギー”と、血液や筋肉を作る“たんぱく質”が欠乏した状態」「健康な体を維持し、活動するために必要な栄養素が足りない状態」をいいます。
人は静かに座っているだけでも、生きていくため(心臓を動かす、呼吸をするなど)に約6割のエネルギーを使っています。
さらに、体を動かすために約3割、食べ物を消化吸収するために約1割を消費します。
栄養不足が続くと体は筋肉を分解してエネルギー源として利用するため、ますますやせてしまいます。
そのため、活動量が少なくても、十分なエネルギーを摂ることが必要です。

高齢者に増える「低栄養」状態

高齢になるにつれ、低栄養になりやすい理由には次のことが考えられます。

●食が細くなる
食べる機能が低下したり歯や義歯のトラブルで食事そのものが楽しめなくなったりするほか、薬の副作用、持病、不活発な生活、ストレスなどの影響により、少食になり体重が減少しやすくなります。

●内臓の機能が衰える
加齢に伴い消化機能が低下し、栄養が吸収されにくくなるので、若い頃と同じ量を食べていても栄養不足になる場合があります。
また、胃腸の機能低下から便秘や胃もたれを起こしやすく、食べる量を控えてしまう場合もあります。

●好き嫌いなどで食事内容が偏る
同じような献立が続いたり、食べやすい食品ばかりを選んだりすることで、栄養バランスが偏る傾向があります。

2.低栄養が招く危険


低栄養はなぜ怖い?

栄養状態が低下すると、日常生活に様々な悪影響を及ぼします。
・筋肉量や筋力低下で歩行困難となり、寝たきりのリスクが高まる
・骨粗しょう症が進行すると、転倒や骨折をきっかけに寝たきりになるおそれがある
・免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすく、回復にも時間がかかる
・うつ状態になったり、認知症の発症リスクが高まったりすることがある
・皮膚が弱くなり、傷や床ずれができやすく、治りにくくなる
このほかにも、疲れやすくなる、病気の回復が遅れるなどの悪影響が生じます。
低栄養が怖いのは、図のような悪循環に陥ってしまうことです。

低栄養が長引くと、筋肉量や筋力低下による「サルコペニア」、心身の活力低下による「フレイル」が進行し、転倒や寝たきり、要介護状態のリスクが高まります。

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